マンボウ日記 -ヨーロッパ編-

プロローグ



2009年4月。

マンボウの研究を離れて5年。
それでも趣味でマンボウを追いかけていて、世界の何処からかでも情報が入るようにと続けているこのホームページに1通の電子メールが届きました。
それは本当に短いメールで…

Dear Sir,
I am a Zoologist from Switzerland working on the Mola mola, in the Strait of Gibraltar.
Surfing on the Internet, I found your page:http://mola1979.web.infoseek.co.jp/index.html.
I would be very interested to come with you in contact, concerning Mola mola.
Kind regards
Lukas Kubicek
molamondfisch@gmail.com

とありました(本人の希望で本名とアドレスを載せています)。
スイスの動物学者?ジブラルタル海峡でマンボウの研究をしている?ネットで私のウェブサイトを見つけた?

そしてメールには添付ファイルが。
これは開いて大丈夫なのだろうか?マンボウ関係者を装ったウイルス付きメールではないだろうか?
少し考えた後、私の信条である『マンボウ好きに悪い奴はいない』を貫くことを決意、添付ファイルを開いて見ると・・・



なんとそこには大量のマンボウの写真が!!?
そう、これがスイス人動物学者Lukas(以下ルーカス)との友情の始まりでした。

その後、私は仕事の関係でアジアのある国へ駐在することになり、年末休暇を利用して彼の家に遊びに行くことに。
ルーカス一家、親戚一同、皆さん本当によくして頂き、マンボウを通じた国際交流をすることが出来ました。

それからも彼とは連絡を取り続け、ヨーロッパで一緒にマンボウのサンプリングをすることに。
半年以上のスケジュール調整を重ねて2011年5月、ついに決行の時が。

ここから始まるマンボウ日記は、私の人生最初で最後かもしれないヨーロッパでのマンボウを追いかける旅です。
少々長くなるかもしれませんが最後までお付き合いいただければ幸いです。
それではどうぞ!

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2011年 5月某日

今回の旅は、私とルーカスだけではなく、私の研究を引き継いで今も尚マンボウの研究を頑張っている後輩のS君を含めた3人。
S君は今、日本で一番マンボウに詳しい研究者でしょう。
そんな3人の集合場所はスペインのマラガという小さな港町。この町はあのパブロ・ピカソが生まれた町としても有名です。
私の住んでいる国からは直行便が無いため、アムステルダム(オランダ)→マドリッド(スペイン)経由でマラガに行くことに。
S君は日本からドバイ(UAE)経由→でマドリッドに(私と合流して一緒にマラガへ)、そしてルーカスはスイスから車でマラガへ、という何とも大胆で不安な待ち合わせ方。
果たして無事に合流出来るのか?それが第一関門でした。

折角なので、私はアムステルダムを少しだけ調査していくことに。
  
風車、運河はとりあえずささっと見学して、早速、水族館と魚市場へ。
しかし、金曜日の昼真っから談笑しながらビール飲んでたけど、仕事は?
まぁ、そんな疑問を持つこと自体が日本人特有なのかもしれないね、ということでちょっぴり羨ましさを感じながら結局自分もオランダビール、ハイネケンを飲みました^^;
ちなみに世界一平均身長が高いオランダ、周りの女性もみんな私(172cm)より背が高い。小人にでもなった気分です。
そして自転車の街でもあるだけに、自転車に乗っている人がいっぱい。おかげで街の空気はきれい(な気がする)。
路面電車で15分、水族館へ到着。しかし写真を載せるほどの水族館ではありませんでした。もちろんマンボウもいない。
一方、魚市場はというと…。
  
アジ、サバ、イワシ、トラウト、キンメダイのような日本でも馴染みのあるような魚がズラリ。
北海に面しているので魚を食べること自体はごく普通のようです。
しかし、ここでもマンボウはなし。そういえばオランダでのマンボウ名も聞いたことないし、マンボウにはあまり馴染みがないのかもしれません。
う〜ん、残念。
  
街はいかにもヨーロッパって感じで趣のある通りは歩いていてワクワクさせてくれます。
ちなみに3枚目の人が写っていない通りの写真、20時です。夜の短いこの季節、時差ボケも合わさって時間の感覚がおかしくなりそうです。

翌日、マドリッドへ移動。
  
これまた見事な青空。早速、市場へ。
お、これはカメノテですね(下中央の写真)。スペイン人もカメノテを食べるとはびっくり。
カメノテとは海に行くと岩場の岩と岩の間によく見られる甲殻類の一種でエビやミジンコの仲間です(貝ではありません)。
日本では湯がいたり味噌汁に入れたりして食べます。
スペイン人に親近感が湧いてきましたね。
  
さて、朝ごはんはこの市場でとることに。
タパス(右上の写真)と呼ばれるスペインの小皿料理です。パンの上に酢漬けのイワシを乗せた物をいただきました。
これは美味い♪そして朝からワイン♪
ちなみにここスペインではほとんど英語が通じない。
事前に友人に教えて貰った簡単なスペイン語と「地球の歩き方」、あとは笑顔とジャスチャーでなんとか乗り切りました。
いつもどこの国に行ってもそうですが、買い物やホテルはなんとかなるもんですね。

午後、ウソ募金活動していた女性3人にカードをすられそうになったけど、なんとか回避。
そうだ、ここは日本じゃなかった。そして現在、失業率の高いスペイン。
気を引き締めて行動しなければ。

そしてS君と合流。
  

一番懸念していた第一関門を突破。一昔前だと、海外で携帯電話で連絡なんて取れなかったけど、今は本当に便利だなぁ。
久しぶりの再会とこの旅の成功を祈ってビールで乾杯!
ちなみにもう20時です。なんという明るさ。。
久々のマンボウ話で盛り上がりました。最近の研究事情が分かってとても有意義な時間でした。
ちなみにあの「マシシユルーム」、もうちょっと頑張って欲しかった。
マドリッドにも日本の居酒屋さんがいくつかありましたよ。聞けばよかったのに。

さて、そしてついにマラガへ。
マドリッドからは列車です。
  
朝ごはんはパン。
パエリアを食べたとはいえ、そろそろご飯が恋しくなる・・・こともなく意外とすんなりパンに馴染んでます。
列車内も快適でゆっくり寝ることが出来ました。
そして4時間後、マラガに到着。
お出迎えはピカソのゲルニカ。日本人なら美術か社会の授業で必ず習う(今はどうなの?)絵です。
  
待つこと1時間・・・ルーカスと合流!
Long time no seeeeeee!!! Lukas!!
ごめん、ルーカス。飛行機で来ると思って空港へ迎えに行ってくれてたのね。。
さぁ、メンバーは揃った!ここからが本当の旅の始まり。
かなりの長距離を移動するのとサンプリングの荷物が多いため、ルーカスはわざわざ車でスイスから来てくれたのだ。
私も国際免許証を持っているのでヨーロッパを運転出来る。
さ、出発!

予定ではこの日の夜中までにポルトガルのオリャオという場所に到着しなければならないのですが、私のわがままでまずはイギリス領のジブラルタル
に行くことに。
  
ジブラルタルとはイベリア半島南東端、地中海の入り口、スペインと陸続きにあるイギリス領なのだ。入国は非常に簡単だけど、通貨は違うし(ユー
ロではなくジブラルタルポンド)、公用語は英語(イギリス領なので)だしと雰囲気も結構変わる。なぜここに来たかったのかというと、ルーカスの
メールでもあったように、マンボウが獲れる場所なのです。。
しかし、ルーカス曰く、ジブラルタルでも少し前までは伝統的な定置網があったらしいが、今では廃れてしまい、漁をしている人はほとんどいないと
のこと。残念だがこれが現実。
  
ちなみにルーカスとの会話は英語。お互いに公用語でない(ルーカスの地区はスイスジャーマン:スイス訛りのドイツ語)上に、私も英語はそんなに
得意ではないので、たまに会話が成立しないことも。
ま、そこはお互い笑って済ますのです。
この日は天気が非常に悪く、大西洋からの風がものすごく強い。結局、海を見ることは出来ませんでした。
ちなみにここジブラルタルとスペインの国境(と言ってもジブラルタル入国後すぐのところ)はなんと滑走路なのです。
飛行機が着陸するときは大渋滞。いやはや待ちつかれた。

改めてポルトガルへ向けて出発。
  
走ること7〜8時間。
ようやくポルトガルのオリャオに到着。
  
なぜ、我々はこの町を目指したのか。
それはここにはマンボウが獲れること以外に、我々には非常に重要な意味があったのです。

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