マンボウの卵

今回はマンボウの卵についてのお話。マンボウは魚類なので卵を産みます。さてどのくらいの数の卵を産むのでしょう??
1.あんなに大きくなるんだもの、1〜2個産んで子育てするんじゃない?
2.いやいや100万〜500万個は産むでしょ。
3.あんだけ体が大きいんだから3億個以上は産むでしょう。
正解は・・・3.の
3億個以上です。
あるマンボウの基礎となる論文には3億個と記載されていますが、その文章は根拠に乏しく、計測方法などは一切記載されていません。ということでここでは3億個として進めますが、将来、この数を否定する論文が出てきても不思議ではありません。そこのところをご理解していただき、話を進めていきたいと思います。
ちなみに子育てしません。子育てして全部大きくなったらとんでもないことになりますね。卵のほとんどは他の生きものに食べられてしまいます。一体、どんな魚がマンボウの赤ちゃんを食べるのでしょう?それは
マグロやカツオなどの回遊魚です。これらの魚の胃の中を見てみるとマンボウ類の稚魚がたくさん出てくることがあるそうです。生き残って大きく成長するのはそのほんの一握りでしょう。
まずはマンボウの卵を見てみましょう。

マンボウの卵を拡大したものです。真ん中の大きな卵が1.2〜1.5mm程度です。ある論文ではマンボウは多回産卵で産卵期間は比較的長く、何回かに分けて行われるのではないかということです。一気に3億個産卵するのではないようですね。

マンボウの卵(拡大)
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1m級のマンボウの卵巣。 3m級のマンボウの卵巣 獲れたての巨大マンボウの卵巣

さて卵についてもう少し詳しく述べると、3億個といってもそれだけの卵を持つマンボウの大きさはだいたい全長150cmくらいのものだそうです。卵の大きさは近縁種のヤリマンボウが1.8mm前後、クサビフグが1.5mm前後であることからマンボウも1〜2mmくらいの分離浮遊卵であると推測されます。分離浮遊卵とは卵同士はくっつかずバラバラになり、浮遊する卵のことを言います(カンパチ、サバ、アジ、カツオ、ヒラメなど)。

他にも粘着沈静卵(粘性沈着卵とも言う)というのもあります(トラフグなど)。これは卵同士がくっついていて沈む卵で、海藻や岩などにくっつきます。マンボウは分離浮遊卵で、産んだ卵は広い海に分散します。これだと一気に食べられて全滅することを防ぐことが出来るでしょう。3億個の卵が海に分散されれば、それは粘着沈静卵よりも生き残る可能性が高いでしょうね。

しかしマンボウの卵や孵化直後の仔魚についての知見は今のところないのです。上記の説はほぼ間違いないと思いますが、早く真実が知りたいですよね。そんな中、研究で私が3mのマンボウを解体したときに、運良くそのマンボウは雌で、マンボウの卵巣(卵の入った袋)を発見しました。それが今回の写真です(ホルマリンで固定されています)。卵巣重量は3399.2g!!約3.4キロです!消しゴムの大きさから卵巣の大きさがどのくらいかわかると思います(写真中央)。黄色い物体が卵です。まだこの頃は卵同志はくっついています。
しかし1m級のマンボウと3m級のマンボウの卵巣、同じ場所で獲れたにもかかわらず何なのでしょう。あの小さな卵巣、まだまだ大きくなるのでしょうか?
その後、さらに巨大なマンボウの卵巣の写真を後輩に送ってもらいました。別のコーナーで紹介した境港の巨大マンボウの卵巣なのです。そのマンボウは全長275cm、体重1.15t。卵巣を持っていたため当然「雌」。その卵巣がビックリするほどの大きさで・・・。上記の3mマンボウよりもさらに巨大だったのです。その写真がコチラ。重量が20〜30kgくらいあったそうです。3kgの卵巣を見て驚いていた自分が恥ずかしくなるほどの大きさです。
ということはあの3mマンボウの卵巣もまだまだ大きくなるのですね。この卵巣もさらに大きくなるのでしょうか?こんなもの腹にかかえて泳ぐのはキツイでしょうね。日本近海でこのような大きな卵巣を持つこのマンボウ。一体どこで産卵するのでしょうか。これまでの情報からの推測ではハワイ沖から東南アジア付近の海域なのですが、この卵巣、今にも産卵しそうな程の巨大さです。
今回はここまで。まだまだマンボウには謎はいっぱいです。また新たな情報が入り次第お知らせしますね。

P.S.
ですが、漁師さんは小さな卵巣は炊いて食べるそうです。1個10万円とか言ってたけどホントでしょうか?(笑)
egg5.jpg
巨大マンボウの巨大な卵巣

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